- 自衛官の退職金は、具体的にはいくらもらえるのでしょうか?
- 退職金から税金を引いた後の手取り額はどれくらいになるのか?
- 退職金の支給日はいつなのでしょうか?
これらの疑問や興味を持つ方は、少なくないはずです。
この記事では、自衛官の退職金に関するこれらの疑問を、簡単な計算シミュレーションを通じてわかりやすく解説しています。
税引後の実際の手取り額や、支給日に関する詳細な情報もしっかりとお伝えします。
最後までお読みいただくことで、自衛官の退職金に関する正確な情報を得ることができ、安心して退職を迎える準備ができることでしょう。
自衛官の退職金制度の基本情報
自衛官としての勤務は、国のため、そして私たちの平和のために尽力する大切な役割です。
その貢献に対して、自衛隊は退職金という形で感謝の意を示しています。では、この退職金制度はどのようなものなのでしょうか。
自衛隊の退職金制度は、勤務年数や階級、役職に応じて、一定の金額が支給されるものです。
一般的に、勤務年数が長いほど、また、階級が高いほど退職金の金額も増加します。
退職金制度は、自衛官が長年にわたり尽力してきたことを評価し、退職後の生活のサポートを目的としています。
また、退職金は一時金として支給されるのが一般的ですが、特定の条件下で分割して受け取ることも可能です。
税金の面からも、退職金の受け取り方を選べるのは大きなメリットと言えるでしょう。
退職金と若年給付金の違い
定年退職を迎えた自衛官は、退職金とは別に「若年給付金」を受け取ることができます。
- 退職金とは異なり、退職後の半年以内と翌々年に60歳までの期間の給与をまとめて受け取ることができます。
- 支給は2回行われ、1回目の支給額は2回目の半分程度です。
- 1回目の支給は退職月によって異なり、4月から9月までの退職者は10月に、10月から翌年3月までの退職者は翌年4月に支給されます。2回目の支給は、退職した年の翌々年の8月に行われます。
自衛官の退職金の計算方法
ここでは、退職金の計算方法を基本の計算式から、具体的なシミュレーション、そして階級や勤続年数がどのように影響するのかを詳しく解説します。
退職金の計算式
退職金の計算は、基本的に以下の公式で行われます。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額
基礎金額はあなたの階級や役職に応じて定められ、勤続年数は自衛隊での勤務年数、支給率(支給割合)は勤務年数や階級に応じて変動する値です。
退職理由によっても支給率が変わってきますので、その点も考慮しておくべきでしょう。
調整額に関しては、約100〜300万円の幅で定められます。
退職金の計算シミュレーション
以下は、条件別に退職金を計算シミレーションしたものです。
全く同じような状況の人は珍しいと思いますが、参考にはなるはずです。
【定年退職で在職中に休職期間のある例】
・退職日の俸給月額:行(一)5級73号俸 387,400円
・在職期間:(採用年月日) 昭和59年(1984年)4月4日
(月の途中での採用:1月として算定)
(昇格年月日) 令和 2年(2020年)4月1日(5級昇格)
(退職年月日) 令和 5年(2023年)3月31日・私傷病による休職期間:除算対象期間 7月間(※休職期間は、調整額の算定の基礎となる期間の計算に影響がなかったものとする。)
・除算期間:7月÷2=3.5月 → 4月(1月未満端数切上げ)
・勤続期間:(2023年3月)-(1984年4月)-除算期間(4月)
= 39年-4月
= 38年8月 → 38年(1年未満端数切捨て)・退職理由別・勤続期間別支給割合:47.709(退手法5条適用)
出典:退職金制度の概要 人事院
・退職手当支給額:基本額(退職日の俸給月額 × 支給割合(47.709))+ 調整額
= 387,400円 × 47.709 +(32,500円×36月+27,100円×24月)
= 20,302,866.6円
= 20,302,866円 (1円未満端数切捨て)
自衛官によっては、途中で休職を取る方も珍しくありません。
【早期退職募集制度に応募し、53歳で応募認定退職する場合の例】
・退職日の俸給月額:行(一) 5級70号俸 386,000円
・在職期間:(採用年月日) 平成4年(1992年)4月1日
(昇格年月日) 令和3年 (2021年)4月1日(5級昇格)
(退職年月日) 令和4年(2023年)3月31日・定年年齢までの残年数:7年
・勤続期間:(2023年3月)-(1992年4月)= 31年・退職理由別・勤続期間別支給割合:42.31035(退手法5条適用)
出典:退職金制度の概要 人事院
・退職手当支給額:基本額(退職日の俸給月額 × (1+3%×残年数(7年))× 支給割合(42.31035)+ 調整額
= 386,000円 × (1+21%) × 42.31035 + (32,500円 × 24月 + 27,100円 × 36月)
= 21,517,072.071円
= 21,517,072円(1円未満端数切捨て)
自衛隊の多くは50代半ばで定年退職となりますが、その他にも任期制での早期退職制度などもあります。
早期退職してしまうとその分、退職金は減ってしまうデメリットが発生します。しかし、早期に退職して民間企業に転職する人も意外に多いです。
若年給付金の計算方法
若年給付金の計算は、以下の式で行われます。
「若年給付金」 = 「棒給月額」 × 「算定基礎期間」 × 「算定割合」 × 「政令率」
例えば、1尉の役職で、棒給月額が40万円の場合、1回目の支給額は約3,393,720円、2回目の支給額は約8,400,560円となり、合計で11,794,280円が支給されることになります。
注意点として、再就職先での給与が多い場合、若年給付金の一部を返納することが求められる場合があります。
具体的には、退職翌年の所得が一定の額を超えると、2回目の支給額が減額されたり、1回目の支給額を返納することになる場合がありますので注意しましょう。
自衛官の退職金に関わる税金
ここでは、退職金にかかる税金、退職所得控除の仕組み、そして税金を考慮した実質的な手取り額について詳しく解説します。
退職金にかかる税金(所得税・住民税)
退職金には、所得税と住民税がかかります。
- 所得税:退職金の総額に応じて変動する税率で計算されます。
- 住民税:居住地の自治体によって異なる税率で計算されます。
これらの税金は、退職金の総額や受け取る年の所得によって変動します。
そのため、具体的な税金の額を知るためには、各税の計算方法を理解することが必要です。
退職所得控除の概要と計算方法
退職所得控除は、退職金の所得税を軽減するための制度です。この控除は、勤務年数に応じて変動します。
具体的な計算式は以下の通りです。
勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円 + 70万円 × (A – 20年) |
退職所得控除の計算が面倒な方は、国税庁が公開している早見表(源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和4年分))を活用するのがおすすめです。
税金を考慮した実質的な退職金の手取り額
退職金から税金を差し引いた後の実質的な手取り額を知ることは、退職後の生活設計をする上で非常に重要です。
実際の計算式としては、次の通りです。
手取り額 = 退職金 − ( 所得税 + 住民税 − 控除額 )
この計算式をもとに、具体的な税金の額や退職所得控除を考慮することで、実際に手元に残る金額を知ることができます。
若年給付金には税金がかかるのか?
退職金と同時に支給される若年給付金にも、税金はかかります。
退職金とは異なり若年給付金は2回に分けて支給されるため、その点に注意が必要です。
1回目の若年給付金は、退職手当と合わせて税金がかかります。この時、所得税と住民税が源泉徴収される形で徴収されます。
しかし、特別な手続きは不要で、確定申告の必要もありません。税金の額は、支給額の約5~7%程度となります。
2回目の若年給付金は、一時所得として認識され、税金がかかります。この場合、確定申告が必要です。
税金の額は、支給額の約10~15%となり、さらに2.1%の復興特別所得税も加わります。税金を節約する方法として、「ふるさと納税」がおすすめです。
自衛官の退職金の支給タイミング
退職金の支給タイミングは、退職後の生活設計や資金計画に大きく影響します。
ここでは、退職金の支給プロセスや期間、さらには特例や変更条件について詳しく解説します。
退職金の支給プロセスと期間
退職金の支給は、以下のプロセスで行われます。
- 退職届の提出:まず、正式に退職の意向を伝えるための書類を提出します。
- 退職金の計算:勤務年数や階級に基づき、退職金の金額が計算されます。
- 通知の受領:計算された退職金の金額が通知され、確認を行います。
- 支給:指定された口座に退職金が振り込まれます。
通常、退職届の提出から退職金が支給されるまでの期間は、約1ヶ月から2ヶ月程度となります。
ただし、退職の時期や状況によっては、期間が前後することもあるでしょう。
支給日の特例や変更条件
退職金の基本的な支給日は、退職日となります。
しかし、以下のような特例や変更条件が考えられます。
- 早期支給:特定の理由(例:病気や家族の事情)により、退職金の早期支給を希望することができます。
- 分割支給:税金の面から、退職金を分割して受け取ることを選択することも可能です。
- 遅延支給:一定の条件下で、支給を遅らせることも考えられます。
受け取り方やタイミングは、自身の生活設計や資金計画に合わせて選択することができます。
詳しい条件や手続きについては、所属する部署の人事担当者に相談してください。
自衛官の退職金・若年給付金の使い道
ここでは、退職金や若年給付金の使い道に関する失敗例やその教訓、そして具体的なアドバイスを詳しく解説します。
失敗例とその教訓
退職金や若年給付金を受け取った後、多くの元自衛官がさまざまな使い道を選びます。
しかし、中には後悔するような使い方をしてしまったという声も。以下は、そのような失敗例とその教訓です。
よくある失敗例 | 詳細 | 教訓 |
---|---|---|
一時の贅沢に使い果たす | 海外旅行や高級車の購入など、一時の楽しみのために大部分を使ってしまった。 | 長期的な生活設計を優先し、一時の楽しみは計画的に。 |
投資(投機・ギャンブル)での失敗 | 知識や経験が乏しいまま、リスクの高い投資に手を出して大損をしてしまった。 | 投資は十分な知識と情報収集が必要。専門家の意見も参考に。 |
無計画な事業開始 | 独立や起業を夢見て、計画もなく事業を始めて失敗した。 | 事業を始める際は、しっかりとした計画と資金計画が必要。 |
特に、よくあるケースが「投資での失敗」です。
周りからおすすめされた投資案件だったとしても、最低限の基礎的な知識を身につけた上で取り組むがの無難です。
現在は、書籍やYouTubeなどで容易に学べる環境が整っていますので、投資に関する学習を最優先にして取り組みましょう。
また、FP(ファイナンシャルプランナー)や日商簿記検定などの資格を取得するのもおすすめです。
退職金を活用するための具体的なアドバイス
退職金をうまく活用するためのアドバイスとしては、以下の点が挙げられます。
- 資金の一部を非常時のための貯蓄として確保しておく:将来の不確実性を考慮し、一定額を貯蓄として確保する。
- 投資はリスクを理解した上で行う:リスクを取る投資は、失うことを前提とした金額で行う。
- 生活設計をしっかりと立てる:退職後の生活費や将来の目標を明確にし、それに合わせて資金を計画的に使う。
自衛官の退職金に関するよくあるQ&A
ここでは、退職金に関してよく寄せられる質問と答えをQ&A形式でまとめました。
Q: 退職金はどのような場合に受け取れないのですか?
退職金の受給資格を失う主なケースとしては、勤務期間が短すぎる場合や、一定の不正行為があった場合などが挙げられます。
Q: 退職金の計算に関わる「支給率」とは何を指しますか?
支給率は、退職金の計算において、勤務年数や階級に応じて設定されるパーセンテージのことを指します。
この支給率を基に、退職金の具体的な金額が計算されます。
Q: 自己都合で退職した場合、退職金は少なくなりますか?
自己都合で退職する場合は、支給率が割り引かれます。
加えて、25年以上の勤務期間が必要な調整額の支給もされない場合が多いです。
それらを考慮すると定年退職者よりも、退職金はかなり少なくなります。