自衛官の定年後の再就職や再任用について元自が解説!退職後は悲惨だと言われるのは本当なのか?
- 自衛官としての定年後、再就職や再任用はどのようにすすめるのか気になる…
- 「退職後の自衛官は悲惨」という声がネット上で散見されますが、その真実はどうなのでしょうか…
これらの疑問や不安をお持ちの方は、多いのではないでしょうか。
この記事では、元自衛官が定年後の再就職や再任用の実態、そして退職後の生活の真実について、具体的なデータや事実をもとにわかりやすく解説しています。
ネットの声や実際の経験をもとに、自衛官の退職後のキャリアと生活に関する真実を明らかにします。
最後までお読みいただくことで、自衛官としての退職後の道のりに関する正確な情報と深い理解を得ることができるでしょう。
自衛官の定年に関する基本情報
自衛官としての生活は、多くの人にとって誇り高く、やりがいのあるものです。しかし、そのキャリアには定年という大切な節目が存在します。
ここでは、自衛官の定年に関する基本的な情報をわかりやすく解説します。
自衛官は、民間企業と比較して定年時期がとても早いです。その点を考慮した上で、定年後のライフプランを早期に立てておく必要があります。
階級ごとの定年年齢の違い(若年定年制自衛官)
階級 | 定年退職年齢 |
---|---|
将・将補 | 60歳 |
1佐 | 57歳 |
2佐・3佐 | 56歳 |
1・2・3尉 准尉 曹長・1曹 | 56歳 |
2・3曹 | 54歳 |
民間企業の定年が満65歳なのに対して、自衛隊では長くても将官クラスで60歳です。
一般隊員(幹部自衛官を除く)だと、54〜56歳で定年を迎えてしまいます。
年金受給開始が原則65歳からなので、これでは約10年ほどの空きができてしまいます。
また昨今は、年金だけで老後生活を乗り切るのは難しい状況であるため、最低でも70歳くらいまでは働くようなライフプランを持っていた方が無難かも知れません。
自衛官の退職金が2,000〜3,000万円ほどなので、退職金だけで空白の10年間を生き残るのは難しいでしょう。
任期制自衛官と若年定年制自衛官の違い
任期制自衛官は、初めに「自衛官候補生」として短期間の教育を受ける制度です。
この教育を終えると、陸上自衛官の場合は大体2年間(技術系の一部は3年間)、海上や航空自衛官の場合は約3年間の任期で勤務します。
その後の任期は、2年ごとに更新されます。
1任期目が終了した際には、自衛官としての継続勤務、民間企業への転職、あるいは高等教育機関への進学など、自身の希望に応じて次のステップを選択することが可能です。
以下は、特例退職手当です。任期制自衛官は、退職時の任期数にあわせて手当が支払われます。
任期 | 陸上自衛隊 | 海上・航空自衛隊 |
---|---|---|
1任期 | 約58万円(2年) | 約95万円(3年) |
2任期 | 約145万円(2年) | 約151万円(2年) |
累計 | 約203万円(4年) | 約246万円(5年) |
一方、若年定年制自衛官は、任期制とは異なり、特定の年齢までの勤務が前提とされる制度です。
自衛官と諸外国軍隊の定年年齢の違い
上の表は防衛省が公開している資料の一つですが、自衛隊と諸外国軍隊の定年を比較してもそれほど変わりないと言えます。
隊員の大部分を占める曹クラスの定年年齢を比較してみると、日本は若干諸外国と比較して年齢が低いようです。
アメリカに至っては、定年年齢ではなく在職年数で上限が設定されているため、一概に比較することはできません。
イギリスに関しては、階級に関係なく55〜60歳で定年を迎えることができるため、自衛隊よりも待遇が良いと言えます。
自衛官の定年後の選択肢
定年を迎えた後の人生は、新たなスタートとも言える大切な時期です。
自衛官としての長いキャリアを経て、次のステップにどう進むかは、多くの方が悩むポイントでしょう。
ここでは、定年後の選択肢とその重要性について詳しく解説します。
多くの場合、定年後は民間企業への転職もしくは、自衛隊への再任用となります。
定年退職自衛官の再就職の現状
定年退職後(55〜56歳)の再就職先としては、サービス業や公共事業、製造業などが挙げられます。
退職自衛官の約6割がサービス業もしくは、公共事業関連の業界へ転職しているケースが多いようです。
民間企業へ再就職する場合、いずれにしても現役自衛官の時よりもかなり給料が落ちることを覚悟しておかなければいけません。
また現時点で、再就職を検討していない方も自身の市場価値を図るために、転職エージェント(リクルートエージェント)を活用して相談してみてください。相談は無料で行えます。
元自衛官再任用制度の詳細
自衛隊では、定年後も経験豊富な自衛官を活用するための「元自衛官再任用制度」が存在します。
元自衛官再任用制度とは、元自衛官を対象とした再任用制度です。定年退職した人以外でも、元自衛官であれば応募可能です。
再任用されるためには、書類審査や面接試験、身体検査に全て合格しなければいけません。
一次試験の書類審査では、現役自衛官の頃の勤務成績などで総合的に判断されます。
再任用された後の給料に関しては、一般自衛官同様に各階級ごとに定められた給与額が支払われます。
階級が高ければ高いほど俸給も高くなるため、人によっては民間企業に再就職するよりも高い給料を受け取ることができるでしょう。
再任用制度は、任期制(1年ごとに更新)となっており、任期は必ずしも更新される訳ではありません。
自衛官の定年延長の背景と影響
防衛省・自衛隊の公式サイトによると、2023年10月から佐官と2・3曹階級の定年年齢が1歳引き上げられました。
それ以外の階級は、2022年10月にすでに1歳ずつ引き上げられています。
定年延長の背景には、自衛隊の人員不足や、経験豊富な自衛官の知識や技術を引き続き活用したいという思いがあります。
また、国際的な安全保障環境の変化や、技術の進化に対応するための人材育成の観点からも、定年延長は有効な手段と考えられるでしょう。
その影響として、自衛官のキャリアの選択肢が広がることや、組織全体の経験や知識の蓄積が期待されます。
一方で、新たな人材の採用や昇進の機会に影響が出る可能性も考えられるため、そのバランスを取ることが今後の課題です。
万が一、定年年齢を一気に満65歳まで上げてしまうと、上の階級やポストがいつまで経っても空かなくなるため、人材の流動性が悪くなり国防に支障が出かねません。
自衛官の特別昇任と定年
特別昇任は、特定の条件や実績を持つ自衛官が、通常の昇進よりも早く、または特定の役職に昇進するための制度です。
定年退職する自衛官に対しても、一定の条件を満たすことで退職時に特別昇任が適応され、現存の階級よりも一つ上の階級で退職することができます。
具体的な適応条件としては、以下の通りです。
ア 退職時の階級において、定年退職にあっては昇任期間の1.5倍以上、依願退職にあっては昇任期間の2倍以上の期間を勤務していること。
イ 退職時の階級における人事評価の結果その他の事情を考慮した勤務成績が優良であること。
ウ 退職する日前1年以内に重処分を受けていないこと又は退職する日前6月以内に軽処分を受けていないこと。
出典:自衛官の特別昇任の選考基準(通達)|防衛省
階級が上がるため退職金にも若干プラスの影響が出るほか、元自衛官再任用制度を利用する際にも退職時の階級をもとに給与が支払われます。
特別昇任制度は、定年退職者のみならず依願退職者や、任務中に不慮の事故等で亡くなった隊員なども対象となります。
自衛官の年金・退職金制度の仕組み
自衛官としての生活は、多くの犠牲や努力を伴います。
その報酬としての給与や、長いキャリアを経ての年金・退職金は、自衛官やその家族にとって非常に重要なポイントです。
ここでは、これらの制度の詳細や仕組みについて、わかりやすく解説します。
定年後の年金制度の詳細
自衛官の定年後の生活を支える大きな柱となるのが、年金制度です。
年金制度は、基本的に3階建てとなっており、1階に「国民年金(基礎年金)」2階に「厚生年金」3階に「個人型確定拠出年金」や「企業型確定拠出年金」などが該当します。
3階部分は、個人や企業が任意で加入できる「私的年金」になります。
以下は、年金制度の仕組みをわかりやすく図で示したものです。
自衛官の場合は、真ん中の「厚生年金(第2号被保険者)」に該当するため、定年退職した後は65歳から月々約154,000円(基礎年金+厚生年金)が支払われる計算です。
詳しい年金受給額に関して知りたい方は、日本年金機構が運営している「ねんきんネット」で年金見込額のシミュレーションを行ってみてください。
退職金制度とその計算方法
退職金の額は、勤務年数や最終的な階級、役職によって異なります。
退職金 = 定年時の俸給 × 勤続年数に応じた支給率 + 階級に応じた調整額
例えば、曹階級(俸給30万円)のAさんが、25年勤務して定年退職を迎えたとしましょう。
勤続年数に応じた支給率は「34.5825」で、調整額が200万円と仮定すると以下のような計算になります。
300,000 × 34.5825 + 2000,000 = 12,374,750
結果、退職金は約1,230万円です。
尚、勤続年数に応じた支給率に関しては「国家公務員退職手当支給率早見表」で確認できます。
調整額に関しては約100〜300万円の間で定められており、詳しい数値が知りたい方は人事部に問い合わせてみてください。
自衛官の定年に関するよくあるQ&A
自衛官の定年に関する疑問や不安は、多くの方が抱えるものです。ここでは、定年に関するよくある質問とその回答を提供します。
これからの人生設計やキャリアの選択を考える際の参考として、ぜひ活用してください。
Q:自衛官の定年は男女で異なるのか?
自衛官の定年は男女で異なりません。
定年は階級や役職、制度によって異なる場合がありますが、性別による差は存在しません。
Q:定年後の再雇用はどのような条件で行われるのか?
定年後の再雇用は、自衛隊の再任用・再雇用制度に基づきます。
再雇用される条件は、勤務実績や健康状態、組織のニーズなどによって異なります。
具体的な条件や手続きについては、所属する部隊や組織の人事部門に相談すると良いでしょう。
Q:定年が近づいてきたが、相談できる窓口はあるのか?
多くの部隊や組織には、キャリアサポートや人事相談の窓口が設けられています。
定年に関する疑問や不安、将来の生活設計についての相談など、気軽に利用することができます。
Q:定年後の生活設計のためのセミナーや研修は提供されているのか?
自衛隊では、定年を迎える自衛官をサポートするためのセミナーや研修が提供されています。
これらのプログラムでは、再就職の方法や生活設計のポイントなど、定年後の生活をより豊かにするための情報を知ることができます。
Q:定年後の転職活動で自衛官の経験をどのようにアピールすれば良いのか?
自衛官としての経験は、リーダーシップや危機管理、チームワークなど、多くの企業や組織で高く評価されるスキルを持っています。
転職活動の際には、これらの経験やスキルを具体的な実績とともにアピールすることで、高い評価を受けることが期待できます。
自衛官は定年後のキャリアと生活設計を事前に考えておこう
自衛官としての勤務は、多くの犠牲や努力を伴うものです。
その報酬としての給与や年金、そして退職金は、定年後の安定した生活のための大切なサポートとなります。
しかし、物質的なサポートだけでなく、心の準備や生活設計も非常に重要です。
定年を迎える前に、再就職や再雇用の可能性、さらには趣味や家族との時間など、多岐にわたる選択肢をしっかりと考え、計画を立てるようにしましょう。
自衛官としての長いキャリアを経て、これからの人生をより豊かに過ごすための準備を、今から始めてみてはいかがでしょうか。
転職に関する相談は、無料相談できるリクルートエージェントがおすすめです。一度、プロのエージェントに相談した上で、今後のキャリアプランに関して考えるようにしましょう。