クリックされない時代のSEOへ―「グレート切り離し」とエージェンティック・ウェブの夜明け

クリックされない時代のSEOへ―「グレート切り離し」とエージェンティック・ウェブの夜明け
Takuma Oka

外資系SEOスペシャリスト

Takuma Oka (岡 拓馬)

こんにちは、岡 拓馬(おか たくま)です。
このブログでは、海外ノマド×SEO×ストック収入をテーマに、自分の経験や学びを発信しています。

高校卒業後は料理人としてスタートし、その後、航空自衛隊での勤務を経て、2016年からWebライター・SEOコンサルタントとして独立。現在は、海外の外資系企業と契約しながら、フルリモートで働いています。拠点はアジア各国を転々としており、最近はベトナムやタイ、マレーシア、フィリピンなどでノマド生活をしています。

本記事は、「searchengineland」の最新記事を翻訳し、独自の意見を加えたものです。

2025年、検索エンジンの構造が根本から変わろうとしています。

かつて「検索で上位に表示されればクリックされる」という常識は、もはや通用しなくなってきました。

その現象は「グレート・ディカップリング(The Great Decoupling)」――検索で“見つかっても”クリックされないという、検索結果とトラフィックの断絶です。

この記事では、これまでのSEO戦略がなぜ効かなくなったのか、そして今後私たちはどのような方向に向かうべきかを深掘りしていきます。

この記事の要約
  • 検索結果での可視性とクリック率が比例しなくなってきている
  • GoogleのAIオーバービューがトラフィックを奪っている
  • コンテンツをただ作るだけでは流入につながらない
  • これからのSEOは「クリック前提」から「ブランド体験」へと進化する
目次

「見つかっても訪問されない」世界が来てしまった

出典:Edward Sturm

最近、Google Search Consoleのインプレッション数は伸びているのに、実際のクリック数が減っている…そんな現象に頭を抱える担当者も多いのではないでしょうか。

これは個別の問題ではなく、業界全体に起きている変化です。

NPR、Wikipedia、Healthlineといった大手メディアですら、検索表示数は増えているのに、トラフィックが30%以上減少している例が報告されています。

それはなぜか。

Googleが「検索エンジン」から、「答えを提供するエージェント」へと進化してしまったからです。

20年以上続いた「検索=トラフィック」の構造が崩壊

もともと、Webは次のような3者構造で成り立っていました。

  1. コンテンツ制作者が情報を作る
  2. Googleがそれをインデックスして表示する
  3. ユーザーが検索し、クリックして訪問する

この構造のもとで、SEOは成立していました。たとえば、「1位表示なら28%のクリック率」といった数字が通用していたのです。

しかし、Googleは徐々に「クリックさせずに答えを出す」方向へとシフトしていきました。

  • 2012年:ナレッジグラフの登場
  • 2014年:強調スニペット(ポジション0)の開始
  • 2023年:SGE(Search Generative Experience)実験の開始
  • 2024年:AI Overviewsの正式展開(アメリカ)

この変化の本質は、Googleが「検索先」ではなく「答えそのもの」になろうとしているということです。

AI Overviewsは便利だが、Web制作者にとっては脅威

AI Overviewsでは、検索キーワードに対してAIが自動で要約を表示します。

しかもその要約がページ上部(ファーストビュー)に出るため、ユーザーはリンク先に行く必要がありません。

たとえば、レシピを調べたいユーザーにとっては、材料と手順だけ抜き出された箇条書きがあれば十分。

結果、

  • 元の記事は読まれない
  • 広告も見られない
  • 収益が減る

という三重苦が襲いかかってきます。

さらに恐ろしいのは、GoogleはこのAI回答の一部に引用元を載せることで「表示インプレッション」としてカウントしている点です。

クリックされていないのに「可視化された」としてSearch Console上では数字が伸びる――まさに“数字の罠”です。

SEOは2つの方向に分かれ始めている

Takuma

このような中、メディアやマーケターの動きも二極化しています。

1.AIに好かれる設計で「引用」されることを狙う

  • スキーママークアップを丁寧に設計
  • FAQやHow-to形式でAIが要約しやすい形式に整える
  • 出典元としてAIが認識しやすい記述を心がける

これにより、AI Overviewsで引用されることでブランド露出を狙う戦略です。

これは、直接の流入やCVではなくても「見られている状態」を間接的に価値と捉えるアプローチです。

2.そもそもAIに要約できないコンテンツを作る

  • インタラクティブな体験(診断・計算・検索ツール)
  • コミュニティ運営(掲示板、SNS連携)
  • 有料会員制やメルマガなどクローズドな情報発信

AIでは代替できない独自体験を設計することで、ユーザーを「わざわざ訪問させる」戦略です。

私としてはこちらを推奨します。なぜなら、いくらAIに引用されたとしても、そこからのトラフィックが生まれなければ、CVにつながらないからです。

「体験」をデザインする時代へ

これまでのSEOは「インデックスされること=成果」でした。しかし、これからは「どんな体験を提供できるか?」という視点が不可欠です。

検索で表示されることは当然の前提。問題は、そこから先に「クリックさせる価値」があるかどうか。

そして、その価値はただの情報ではなく、

  • 解決策の提示
  • 感情の喚起
  • 行動の促進

といった「人間の意思決定に影響する体験」によって生まれるものです。

結論:クリックされない時代のSEO戦略

SEOは死んだ、という声もありますが、それは違います。

むしろ、今こそ本質的なコンテンツ戦略が求められています。

インプレッションはもはや虚像。CTRやエンゲージメントこそが現代SEOの主戦場です。

2025年は「グレート・ディカップリング元年」として記憶されるでしょう。

私たちWeb制作者・マーケターに必要なのは、

  • 表示されることを目指すのではなく
  • 「選ばれる理由」を創り続けること

この視点こそが、次の検索時代を生き抜く鍵になるはずです。

クリックされない時代のSEOへ―「グレート切り離し」とエージェンティック・ウェブの夜明け

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この記事を書いた人

Takuma Oka Takuma Oka 外資系SEOスペシャリスト

SEO・AI・web3が大好きなWebマーケターです。フィリピン(マニラ)外資系企業で『日本人SEOスペシャリスト』としてフルリモート勤務。サイトM&AやKindle出版、Udemy講師の経験も。元航空自衛官。主に東南アジア諸国を拠点にしています。SEO歴は9年目です。趣味は、中国語の勉強とランニング。

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